過眠を引き起こす睡眠障害には2つの種類がある

過眠を引き起こす睡眠障害は、大きく2種類にわかれます。

ひとつは、慢性の睡眠不足を招くことで昼間に強烈な眠気をもたらす病気。睡眠中に起こる症状のため、なかには自覚できないものもあります。もうひとつは、脳の睡眠・覚醒を調節する機能がうまく働かず、日中に強い眠気が出現する病気です。難しい言葉では、原発性中枢性過眠症となります。

前者の病気としては、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群、就寝時に脚に不快な感覚が続くむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)、夢に合わせて体が動くレム睡眠行動障害などが挙げられます。

後者の病気は、突然眠ってしまうナルコレプシー。わたしが長年にわたり研究を続けている睡眠障害です。

無呼吸状態とは10秒間息をしていないこと

近年、睡眠障害の話で必ず取り上げられるのが睡眠時無呼吸症候群です。日本の睡眠専門のクリニックを訪れる患者さんの7~8割もが、睡眠時無呼吸症候群だとされます。医療機関にかかっていない潜在的な患者を含めると、300万人以上の人が治療を必要としているのではないかと推測されるほどです。

睡眠時無呼吸症候群は、寝ているときに、ときどき呼吸が止まる病気で、呼吸が停止するたびに覚醒反応が起きています。睡眠時無呼吸症候群が問題なのは、本人に呼吸が止まっているという自覚がないのが多いことでしょう。もちろん、何度も覚醒していることにも気づいていません。

夜間に何度も覚醒すれば深い睡眠を得ることができないので、慢性睡眠不足に陥り、日中に眠気が出現するようになります。

睡眠時無呼吸症候群の症状を具体的に解説すると、まず無呼吸状態とは、10秒の呼吸停止のことを言います。これを1回とカウントし、呼吸が止まらない「低呼吸」も含めて、1時間に何回の停止があるかで診断します。

首周りに脂肪がついていると気道が狭くなる

1時間に5~15回くらいだと軽症。15回以上になると中等度の睡眠障害と診断され、治療の必要性が出てきます。

1時間に15回ということは、単純計算すると4分に1回は呼吸が止まるということ。症状が悪化している場合は、1分に1回止まる人もいるほどです。そのたびに睡眠が中断されるわけですから、十分な睡眠が取れるはずもありません。

どうして呼吸が止まるのでしょうか? 睡眠時無呼吸症候群の呼吸停止の多くは、中枢性の問題からくるものではなく、閉塞性によるものと考えられています。

わたしたちの体は、睡眠状態に入ると弛緩、脱力します。気道や舌周辺の筋肉も脱力して緩みます。特にあお向けに寝た時には重力で舌が落ち込み、狭くなった気道を塞いでしまうのです。睡眠時無呼吸症候群に肥満の人が多いのは、首まわりに脂肪が沈着することで気道を狭くしてしまうからです。

実際、欧米では患者に肥満気味の男性が多いという報告があります。