「隣の家の窓にハエがいっぱいたかっている」

【熊切】これわりと最近の話なのですが、「隣の家の窓にハエがいっぱいたかってて、変な臭いがする」というクレームが入ったんです。入居者を調べてみたら、まだ70歳くらいの方だったので、「汚部屋」のパターンかなあと思って、連絡してみたんですが全然連絡がつかなくて。お兄さんが保証人だったので、その方に連絡したら「弟は部屋を汚すようなタイプじゃない」っておっしゃるんですよ。「おかしいから中を調べてくれ」って言われて行ってみたら。

太田垣章子『老後に住める家がない!』(ポプラ新書)

【太田垣】ああ、もしかして。

【熊切】はい、亡くなられていました。この方も家賃は口座からきちんと引き落とされていたので、こちらも気づかなかったんですが、どうやら3カ月くらい前には亡くなられていたようなんです。不幸にも夏場だったので、それはもうすごい臭いでした。

【太田垣】壮絶な現場だったんですね。

【熊切】これもね、お兄さんがいらっしゃったので、解約手続きなどは問題なかったのですが、なにせお兄さんも高齢でいらっしゃったので荷物の撤去作業に僕も立ち会ったんですが……。

【太田垣】クマさん、そこまでやるんですか?

【熊切】もうね、一般的な防臭マスクレベルじゃ全く効かなくて、一応プロ仕様の強力な防臭マスクを使ったんですが、まあ、それでも臭いましたね。

作業着に遺体の臭いが染み付いた

【太田垣】もう、防護服みたいなのを着ていかないと。

【熊切】一応作業着で行ったんですけど、なんだかんだで2時間くらい現場にいたから、臭いが染み付いちゃって。もうその作業着は二度と着たくないです。

【太田垣】大家さんの中にも、そんな壮絶な体験をしたことがある人もいると思うのですが、そうなると多分、もう賃貸経営なんかやりたくない! って思っても不思議じゃないですよね。

【熊切】孤独死も含めた高齢者ならではのトラブルについては、家主さんや管理会社は年中耳にしているんですよね。それが積もり積もって、「何も好き好んで高齢者に部屋を貸すことはないかな」というムードが蔓延しているというのが実情でしょうね。

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