持ち家のローン返済が終わらないうちに、一家の大黒柱が倒れたらどうなるか。司法書士の太田垣章子氏は、「新築マンションは値下がり率が高い。このため売却してもローン残高を完済できず、破産に追い込まれてしまうケースが珍しくない」という——。

※本稿は、太田垣章子『老後に住める家がない!』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

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働き盛りの夫の突然の異変

51歳のご主人が倒れたと、事務所へ相談に来られた明美さん(47歳)。ご主人は脳の血管が切れ、植物状態。前兆も何もなく、働き盛りの突然の出来事でした。明美さんはパートタイムでの就労で、一家の家計はご主人が担っていました。

二人の子どもは、すでに成人して独立。末っ子の中学2年生の女の子と3人での生活でしたが、大黒柱が倒れて一変。10年前に3000万円で購入した新築マンションの住宅ローンがこのままでは払えません。

亡くなれば住宅ローンの団体信用生命保険で完済されますが、病気の特約はなかったため、今のままではローンの支払いができず、競売にかかってしまいます。独立した二人の子どもも、自分の生活で手一杯。親の家の援助まではできません。かと言って何かしら手を打たないと、明美さん家族が破綻してしまうことは目に見えています。

物件を売却しようにも、この10年で元本は200万円ほどしか減っておらず、売却代金だけではローン残高を清算できません。担保を抹消するためには、不足分の1000万円を現金で用意する必要があります。

このように一般的には新築不動産は値下がり率が高く、売却しようと思っても住宅ローンの完済ができないため、売却ができないのです。

明美さんの親族はすでに他界。一人っ子なので、兄弟を頼れません。ご主人の両親との同居も、住宅事情から難しそうです。銀行側も支払いの相談には、いい顔をしてくれませんでした。