貸しに出すにもリフォーム費用がかかる
こうなると結局母と娘で安い賃貸物件に転居して、自宅を賃貸にしてその賃料でローンを払っていく、これがいちばん現実的でしょう。ところが10年自宅として使っていたので、人様にお貸しするためにはリフォームも必要です。今この現状でその費用をどこから捻出するか、果たして費用をかけてすぐに入居者を確保することができるか、頭の痛いところです。とりあえずリフォームにいくらかかるのか、賃料相場も合わせて検討するしかありません。
明美さんは新築マンションを購入したとき「これで家問題から解放された」と思ったそうです。でもまさかこんなことで、持ち家に縛られるとは思いもしませんでした。「こんなことなら、マンションを購入せずに賃貸にしておけばよかった」、今ではそう思っています。持ち家があることによって、身軽でいられないこともあるのです。
最終的にご主人の状態から成年後見の申し立てをして、弁護士の先生が後見人に選任されました。私の手から弁護士の先生の手にバトンタッチされた形となりましたが、その後は破産せざるを得なかったのではないかと思います。
明美さんとお嬢さんは賃貸物件に移り住み、なんとか正社員で働ける場所を探しているものの、なかなか厳しいということを耳にしたのが最後です。
持ち家が負担になるのは、何も事故や病気だけとは限りません。
中高年でリストラにあってしまい、その後すぐに再就職ができず、ローンが支払えなくなった相談者もいます。
明美さんのところと一緒です。売却して賃貸に引っ越そうと思ったけれど、いざ売ろうと思うとローン残高以上には売れなかったのです。そうなるとローンは支払えない、でも売却もできないというジレンマに陥ります。売却できないなら、貸そうと思っても、それにはリフォームが必要。にっちもさっちもいかない状況になってしまいました。ちょうど子どもにもお金がかかる時期。完全にお手上げ状態です。
働き方改革が裏目に出る場合も…
またリストラにまでならなくても、働き方改革で残業が減った分、収入も減額されて払えないという人も増えました。共働きを見越してローンを組んだけど、離婚や片方の収入減により、たちまち窮地に追いやられる人もいます。
さらに住宅ローンを最大限に借りている人たちは、ある程度退職金を当てにしている人も多いのですが、この不況で退職金が減額されてしまうと、収入を得る手段が減ってしまう世代で、ローンが払えなくなってしまうことにもなりかねません。
ここしばらく、住宅ローンの金利が下がったこともあり、頭金の額が少なくても不動産を購入できるようになりました。ところが住宅ローンを利用する方の大半は、元利均等方式です。毎月の支払額が一定ですが、当初の支払いの大半は金利に充当されてしまうため、ローン残高はほとんど減りません。元本が減っていくのは、住宅ローンも終盤に差し掛かった頃です。