「給料を来月から50%増やしてください。かなわないなら今月末で辞めます」。インドでコンサルティング会社を経営する野瀬大樹氏は「インド人従業員は自分の社内での価値を高め、退職すると最も困る体制・タイミングを見計らって昇給を主張します。拒否されれば即転職。日本人もそのタフネゴシエーターぶりの10分の1でも見習うべき」という――。
※本稿は、野瀬大樹『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。
「給料を来月から50%増やして下さい。ダメなら今月で辞めます」
私がインドでビジネスをやっていてツラいこと。それは世界最悪のPM2.5ではなく、すぐにおなかを壊す水問題でもなく、売り上げが伸びない点でもなく、社内の人間関係である。
夕方、私の部屋を「コンコン」とノックされるとため息が出る。なぜなら、とにかく彼らはタフネゴシエーターだからだ。ありとあらゆる事実、うわさ、主観、ウソを交えて、自分の給料を劇的に上げろと主張してくる。
実際にこんなことがあった。
大きなプロジェクトが翌月1日からスタート、担当するインド人のチームも決まった。すると、スタート直前の月末25日くらいになって、そのチームのリーダーが私の部屋をノックする。そして彼は、
「給料を来月から50%増やしてください。かなわないなら今月末で辞めます」
と、サラッと言ってくるのだ。
「本当は辞めたくないんです。その代わり、給料を50%上げて」
もちろん、退職するには通知期間があるのでルール違反なのだが、彼らは「そんなものは関係ない」と言い出す。とにかく「オレの希望が通らなければ、すぐにでも辞めてやる!」ということ。
彼らは、自分がいなくなると最も困る体制、タイミングをしっかりつくり上げてから、その“困る度数”が最高点に達したタイミングで、交渉を持ちかけてくるのだ。
もちろんこんな主張はとうていのめないので、私は内心泣きそうになりながらも、
「了解! じゃあパソコンとか備品は全部返してね! お疲れ!」
と返す。そうなると、向こうも本当の狙いは昇給なので、
「イヤイヤイヤイヤ。ボクはこの会社が大好きなんですよ。本当は辞めたくないんです。その代わり、給料を50%上げてください」
と言い出す。
あとは「じゃあ辞めろ!」→「そうじゃない。給料上げろ!」の無限ループ。