ゴネにゴネたインド人の5年後の給料は5倍になった

結局、その後も彼は1年在職した。それから、彼は1年ごとに日系企業を渡り歩いて5年たったいま、私の会社にいたころに比べ5倍の給料をもらっているらしい。恐るべき交渉力である。

彼らは、「社内での自分の価値を高める」ことにも余念がない。私が新しいスタッフを採用しようと面接していると、その様子を見たほかのスタッフが、

「新しい人を雇うんですか?」
「ボクらだけで十分仕事は回ります。そんなコストはムダです」

と言い出す。私が、

「オマエら、いつ辞めるかわからんやん。保険だよ、これは」

と言っても、

「ボクはこの会社が大好きなので絶対に辞めません。信じてください」

と力説してくるわけだ。こういうやり取りを経たところで、そう言った本人が半年後にはもう退職していたりする。

もちろんウソは反則だが、とにかく彼らは「自分がいないと会社が回らない状況」をつくり上げることに余念がない。実にタフネゴシエーターなのだ。

このタフネゴシエーターぶりを、私たち日本人も10分の1くらい見習うだけで給料ももう少し伸びるのではないか。100%見習うのはやめてほしいけど(笑)。

一方、日本人は会社に対して何も主張せず、突然退職する

日本の場合、給料を含めて会社に対して何も主張や提言をせず、会社の方針に従って黙々と仕事をこなすことが忠義だとされている節がある。だが、実際は不満に不満をためてからの突然退職など、よくある話だ。

野瀬大樹『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)

従業員は「オレはこんなに我慢してたのに、会社はなぜわかってくれない?」となるし、それに対して会社側は「どうして、あいつは突然辞めるんや?」となる。しかし、互いに意見を言い合わないので、その原因もわからず、今後の対策もとれない……。結局、日本だろうがインドだろうが、どこにおいても「主張」をしなければ、得てしてお互いが不幸になってしまうということなのだ。

本来、会社と従業員の関係は契約関係であり対等なはずである。会社は従業員の時間を買い、定められた業務範囲の業務を担当させ、その対価として安定した給料を払う。お互いその条件が気に入らなければ、条件を変える交渉、つまり意見を言えばいいし、交渉が決裂したら定められた手続きに従って契約を解消すればいいだけの話ではないだろうか(もっとも日本の場合、法律上、会社側から契約を解消するのは難しいが……)。