インド人は入社初日に転職サイトに新たな自分の情報を登録

とはいうものの、このように「もの言う従業員」になるのは、実際ハードルが高いかもしれない。「そんなこと言ったら、それこそ上司に嫌われてしまうのでは?」と思うこともあるだろうし、事実、心の狭い上司なら「意見を言われた」ということを根に持ち、場合によっては露骨なパワハラをしてくることもあるだろう。

しかし、たとえすぐに「もの言う従業員」にはなれなくても、「いざとなったら、いつでももの言える従業員になる」という意識が大切だ。その意識を持つことで、会社に対する交渉力が生まれる。

ただし、この「いざとなったら、いつでももの言える従業員」になるためには、その前提条件として「いつでも転職できる準備」をする必要がある。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/LiudmylaSupynska)

インド人の従業員たちは、前述したように口をそろえて「給料上げろ」と言う。続いて、「ボスがそれを認めないのだったら辞めます」と半ば脅しのように退職をちらつかせる。

この手の交渉ができるのは、「いつでも転職できる」という“逃げ道”を周到に準備しているからなのだ。彼らは新しい会社に転職しても、すでに入社初日には、転職サイトに新たな自分の情報を登録する。つまり、常にどん欲に「よりよい条件」を探し続けているのだ。そして、少しでもいまのところよりよい条件の会社を見つけたら、もう翌月には面接に行き、場合によっては半年で次の会社に転職する。

「次の場所」を常に確保し、会社との交渉を有利に導く

半年で転職というのは、スキルの蓄積という観点からはどうかと思うが、それでも「次の場所」を常に確保し続けることで、会社との交渉を有利に導くスタイルは私たち日本人も見習うべきだ。

実際に転職するかどうかは別として、「オレに『来てくれ』という会社は、たくさんあるんやで」という状況を、常にキープしておくことが重要なのである。

日本、特に仕事で東京に行くたびに私がチェックするのが、電車や駅の広告、あるいはテレビCMだ。それらを見れば、いま、世の中で何がトレンドなのか、何に対して需要があるのか、一発でわかる。

なかでも最近、特に目につくのが「転職サイト」。場合によっては電車の車内広告の半分が転職サイトの広告だったりする。10年ほど前に比べれば、日本でも転職は一般的になりつつあるし、若い人のなかには、実際にエージェントと頻繁に連絡をとって自分の市場価値を確認する人もいるだろう。

ただ、それでも自分の価値を知るために、実際に具体的な転職先候補と面談までする人は、まだ少ないのではないだろうか。

この点でまだまだ、潜在的需要があると転職エージェント会社が思っているからこそ、あれだけ電車内が広告で埋め尽くされるのだろう。