北九州を拠点とする航空会社スターフライヤーが復調している。安定して営業利益を上げられる態勢が整い、昨年10月には4年半ぶりに国際定期便を再開した。競争力の源泉は顧客満足度にこだわる「プレミアム戦略」にある――。
国際線専用の機材エアバスA320

全便・全席に「モニターと電源」は国内で敵なし

北九州空港を拠点とする航空会社スターフライヤーが復調している。2013年度決算では30億円の営業赤字を出した。だが運航路線を組み換えることで、再建に成功。旅客数は2015年度を底に復調し、2014年度以降は安定して営業利益を上げている。

競争力の源泉は顧客満足度にこだわる「プレミアム戦略」だ。スターフライヤーは、日本生産性本部の「日本版顧客満足度指数(JCSI)調査」で、調査開始以降、国内長距離交通部門では9年、その中の国内航空カテゴリーでは、調査開始以降10年連続首位を獲得している。

好評価の要因は、快適な機内環境のようだ。シートピッチは競合他社が31インチ(約79cm)を標準とするところ、34~35インチ(約86~89cm)と最大で約10cmほど広い。また全便・全席がレザーシートで、モニターと電源も備える。これらは国内線では例がない。

大手エアラインとは違うプレミアム感を上手に訴求し、高い満足度を得ている。ただし、こうした「プレミアム戦略」は、航空業界ではタブーとされている。失敗例が多いからだ。

米国での「プレミアム戦略」は失敗例ばかり

規制緩和が行われた米国で、競争から一歩抜け出そうとプレミアム戦略が流行った。その代表例が「MGMグランドエア」だ。

映画配給会社のMGMがハリウッドのあるロサンゼルスとニューヨーク間で就航した航空会社で、128人乗りのボーイング727‐100型機を33人乗りに改造した豪華な客室がウリだった。筆者は一度、搭乗経験があるが、ハイヒールを履いた客室乗務員から受けるフランス料理のフルコースメニューや焼き立てのクッキーサービスには驚かされた。

だが極端に豪華にしてしまうと、適合する客層が絞られる。運賃とサービスのバランスが取れなくなるからだ。4分の1になった搭乗者数で収益を出す為に4倍の運賃を取らなければいけない。MGMのほかには、標準座席数228席の機体を48席に改造した「EOS航空」という会社もあったが、いずれも続かなかった。