キーポイントは「豪華すぎないプチプレミアム」

日本でもプレミアム戦略を採用した航空会社はあった。たとえば「スカイマーク」は2014年に全席プレミアムをうたう「グリーンシート」を導入したことがある。標準座席数375席の機体を271席仕様とした。これは標準比72%の座席数となるため、単純計算で運賃は3割以上加算しなくては採算が合わない。そのハードルは高かったようで、スカイマークも2015年に取りやめている。

北九州→台北線初便の機内の様子

多くはないが、プレミアム戦略の成功例はある。米国の「ジェットブルー航空」は、スターフライヤーと同じエアバスA320を中心とした機材でシートピッチを広くし、シートモニターを装備している。1999年の創業時より大陸横断便などを上質なサービスで格安に提供した事で人気が出た。

成功の理由は、プレミアム感を出しながら、「LCC」(格安航空会社)に分類されるほど運賃を安くおさえたことだ。豪華すぎないプチプレミアムがキーポイントだろう。ジェットブルー航空も、圧倒的な資金力を元に、多くの路線を設け、一気に消費者の懐に飛び込んで受け入れられた。

松石社長「成功の理由は北九州空港を本社にしたから」

本社でインタビューに応える松石社長

スターフライヤーは「プレミアム戦略」を維持できるのだろうか。昨年11月、松石禎己社長に行ったインタビューの一部を紹介しよう。

――サービスと運賃のバランスや、サービスの維持向上の難しさなどの理由でプレミアム戦略が失敗するエアラインが多い。スターフライヤーは続けられるのか。

【松石社長】「スターフライヤーが成功できたのは、24時間運用のできる北九州空港を本社にしたからだ。機材の稼働率を高められ、価格競争力が出せる。自治体の支援も厚く、福岡空港よりも柔軟なスケジュールを設定できる。北九州から羽田への早朝便や深夜到着の復路便は、国内線ではほかに例がない」

――就航当初のシートピッチ国内最大という触れ込みも、他社の事例が出てきたこともあり話題性は薄くなってきた。

【松石社長】「たしかに就航から12年たてば、リピーターにも飽きが来る。機内装備の更新は、企業価値を維持拡大していくうえで最大の課題だろう。優位を維持できるように、設備投資を考えていきたい」