「私の仕事は社内からプロパー社長を誕生させること」

――他社は機内Wi‐Fiを導入している。出遅れているのではないか。

【松石社長】「機内Wi‐Fiはかなりコストがかかる。時機をみているが、必ずスターフライヤーらしい内容でサービスを開始したい」

――スターフライヤーの筆頭株主は依然としてANAのままだ。松石社長もANA出身であり、取り込まれてしまうのではないか、という見方がある。

【松石社長】「スターフライヤーの社長の仕事は、社員を育て、社内からプロパー社長を誕生させることだ。それが独自戦略を貫くことにつながる。創業当時からのスマートラグジュアリーのコンセプトは受け入れられたが、飽きられることのないような革新性を引き続き追求したい」

本社隣接の格納庫の様子

世界を舞台にした「満足度」で戦えるかどうか

スターフライヤーは2018年10月より4年半ぶりに国際定期便を就航させた。路線は、中部国際空港と北九州空港から台湾の台北桃園空港を結ぶもので、2路線それぞれ1日1往復する。

過去6年間の業績を見ると、2014年度からは利益が出る構造にはなっている。設備投資の内的要因、燃油費の上下などの外的要因もあって営業利益にブレはあるものの、営業収入は300億円代と安定してきた。

「日本版顧客満足度指数」は高い。10年連続首位をひとつの節目に、次は世界を舞台に勝負が必要だろう。2018年には、「SKYTRAX」の「ワールド・ベスト・リージョナル・エアライン」の表彰で10位を獲得した。この順位をさらに上げられるか。スマートラグジュアリーを維持するには、その達成が必要だろう。ただし2018年度は、原油価格高騰と国際線再進出のコスト増で大幅な減益が見込まれる。安定的な利益を出せる構造がサービス面にも関わってくる。

機内Wi‐Fiなど他社の追い上げは激しい。競争優位を失わないために、どんな手を打つのか。スターフライヤーは正念場を迎えつつある。

北島 幸司(きたじま・こうじ)
航空ジャーナリスト
大阪府出身。幼いころからの航空機ファンで、乗り鉄ならぬ「乗りヒコ」として、空旅の楽しさを発信している。海外旅行情報サイト「Risvel」で連載コラム「空旅のススメ」や機内誌の執筆、月刊航空雑誌を手がけるほか、「あびあんうぃんぐ」の名前でブログも更新中。航空ジャーナリスト協会所属。
(撮影=北島幸司)
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