カタール航空が抱える「2つのビハインド」
カタール航空は1997年にできた若い会社だ。本拠地はカタールの首都ドーハ。カタール政府が50%を出資しており、この10年では毎年30%の成長率で、先行するエアラインを脅かしている。その競争力の源泉は、充実したサービスと、利用しやすい運賃設定だ。
なかでも話題になっているのが、「Qsuite」と呼ばれる長距離路線のビジネスクラスだ。ボーイング777‐300ERと新機材エアバスA350‐1000に設定されており、大人2人が横になれる「ダブルベッド仕様」がある。ビジネス客を想定した座席にレジャー客向けのダブルベッドを設けたのはなぜか。カタール航空には、それだけ特徴的なサービスを打ち出さなければ生き残れないという「2つのビハインド」がある。
1.国土が小さく国内線はない
外務省によると、カタール国の国土は1万1427平方キロメートルで秋田県より小さい。人口は267万人で京都府ほどだ。このためカタール国内の需要は限られており、世界のエアラインと戦うには、乗り継ぎ需要を取り込むしかない。世界中へ路線を張り巡らせ、サービスを磨いていく必要があるのだ。
2.中東は「乗り継ぎ地」として遠い
カタールは世界のハブになり得る場所だろうか。地球儀を俯瞰すればわかるように、答えは否である。
中東は、欧米先進国のいずれからも遠い。アメリカ東海岸から欧州に行くには、大西洋を越えてせいぜい9時間あれば目的地に着く。だが中東を経由すると、さらに6~8時間がプラスされる。アジアから中東経由で利用しやすい場所は、アフリカや南米など一部に限られる。欧州からはオセアニア諸国、北米からは西アジアぐらいしかない。
これはカタール航空だけでなく、エミレーツとエティハドという他の中東エアラインにも共通する悩みといえる。
こうしたビハインドをはねのけるアイデアのひとつが「ダブルベッド」なのだ。その根拠は旅客層のデータからもわかる。