ドーハ経由は4~8時間の遠回りだが、価格は安い

前述のように中東は地の利が悪い。だが就航本数は多く、乗り継ぎ自体は便利だ。日本から欧州便で利用することが現実的だろう。

日本から欧州に向かう場合、直行便のない都市であれば、ソウル、上海、台北、香港、モスクワ、イスタンブールなどで乗り継ぐことになる。これらの都市と比較すると、ドーハ経由は4時間から8時間ほど遠くなる。だがその程度の時間であれば、豪華な機内でゆったり過ごすという考え方もあるだろう。乗り継ぎ空港の施設も充実している。

時間がかかるだけに、カタール航空の運賃設定は低くおさえられている。エコノミークラスでは欧州までの往復航空券は6万円代からある。乗り継ぎで時間はかかるが、機内設備は豪華で、価格が安ければ、競争力は持ち得る。

カタール航空のイメージカラーは紫だ。

カタール航空はビジネスクラスに個室を装備したことで登場時は業界を驚かせた。個室化はこれからのビジネスクラスのトレンドだといわれており、カタール航空が先行している。他社の事例ではデルタ航空の「デルタ・ワン」スイートがあるのみだ。日本線にも就航しており、エアバスA350‐900に装備されている。

「豪華さ」を競う傾向はさらに進むのではないか

国際旅客輸送の収益源としての根幹はビジネスクラスにあると言っても過言ではない。エコノミークラス比で正規運賃の2倍、キャンペーン運賃を含めると4倍から6倍と高く設定される運賃は、エアラインにとって魅力である。カタール航空は、エコノミークラスはキャンペーン運賃で埋め、ビジネスクラスは話題の最新プロダクトで売る戦略を取っている。

この「Qsuite」を装備したエアバスA350‐1000型機は、2019年の年頭より羽田空港からドーハを結ぶ路線に就航している。こうした「豪華さ」を競う傾向はさらに進み、今後は完全個室化、シャワー設備や機内ラウンジの設置などが進んでいくことになるだろう。

北島幸司(きたじま・こうじ)
航空ジャーナリスト
大阪府出身。幼いころからの航空機ファンで、乗り鉄ならぬ「乗りヒコ」として、空旅の楽しさを発信している。海外旅行情報サイト「Risvel」で連載コラム「空旅のススメ」や機内誌の執筆、月刊航空雑誌を手がけるほか、「あびあんうぃんぐ」の名前でブログも更新中。航空ジャーナリスト協会所属。
(撮影=北島 幸司)
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