長期に密着取材する「カンブリア宮殿」
「カンブリア宮殿」という、テレビ東京系の経済情報番組がある。
2006年4月から始まり、今年で14年目の長寿番組だ。毎週木曜日の夜10時から放送され、作家の村上龍氏と女優の小池栄子氏が進行役を務める。企業に密着取材した様子をVTRにまとめ、そのうえで経営者らに話を聞く。
1月17日の放送では、茨城県に本店があるサザコーヒーの鈴木誉志男会長(以下、鈴木氏)と、息子の鈴木太郎副社長(以下、太郎氏)が登場した。テレ東の看板番組であり、企業選定の基準は厳しい。密着取材は数カ月にわたる。それだけの長期取材に耐える「ネタ」がなければ、放送には至らない。
筆者は7年前からサザコーヒーに注目し、取材を重ねてきた。その成果は、このプレジデントオンラインや雑誌「プレジデント」などで報じている。サザコーヒーは地方の個人店(個人経営の店)だが、複数の担当編集者が経営理念や企業姿勢に共感し、筆者の企画を取り上げてくれたのだ。その結果、「カンブリア宮殿」に登場するまでになった。
「おいしいコーヒー」にこだわり、半世紀続いた
今回、サザコーヒーに経済番組が注目した理由を考察すると、次の5つの点に整理できるように思う。
(2)毎年「パナマ・ゲイシャ」など世界最高級のコーヒー豆を落札
(3)コロンビアで自社農園を20年運営し、近年は品評会で優勝や入賞を果たす
(4)「おいしいコーヒー」を追求し続ける
(5)創業50年、昔も今も人気が続く「老舗喫茶店」
(1)から(3)はここ10年余の「成果」で、プレジデントオンラインでも紹介してきた。だが、それを培ったのは(4)と(5)の「本質」だ。今回はここを中心に紹介したい。半世紀の間、喫茶店の基本である「おいしいコーヒー」にこだわった結果、注目メディアが増えたのだ。
そもそも、日本でコーヒーが一般人の飲み物として浸透したのは、戦後の高度成長期以降になる。「不易流行」の視点でいえば、時代とともに「消費者が好むコーヒーの味」は変わるが(流行)、コーヒー好きな人が「おいしいコーヒーを飲みたい」思いは変わらない(不易)。後述するサザの目立つ活動も、ほとんどがコーヒーについてだ。店が長年続いたのは、基本の軸足を踏み外さなかったのが大きい。