今年7月に行われる参院選に併せて衆院を解散し、「衆参同日選挙」を行うという観測が強まっている。安倍晋三首相は「頭の片隅にもない」と何度も完全否定しているが、「同日選」の観測は“くすぶり”を越えて、炎を上げつつある。なぜ安倍首相の言葉は、信じてもらえないのか――。
2019年1月4日、伊勢神宮内宮の参拝に臨む安倍晋三首相。(写真=時事通信フォト)

「解散と公定歩合」はウソをついてもいい

1月4日午後、伊勢神宮司庁。恒例の参拝の後の年頭会見。

安倍氏は同日選の観測について聞かれるとこう語った。

「そういう声が一部にあるということは承知をしておりますが、私自身の頭には片隅にもないわけであります。まずは参議院選挙で、これからの日本がどのような国を目指すのか、国民の皆さまにしっかりと訴え、堂々と骨太の政策論争、議論を行っていきたいと、こう考えています。その上で、繰り返しになりますが、解散総選挙という言葉は頭の片隅にもないということであります」

普通に読めば、完全なる否定である。安倍氏は昨年末、12月30日に放送したラジオ日本の番組でも「衆院解散は頭の片隅にもない」と発言。同日選や衆院解散の質問には、こう答えると決めているのだろう。

しかし、この言葉をまともに受け止める国会議員は与野党を見渡しても1人もいない。衆院の解散権は首相にある。そして国会では「首相は衆院解散と公定歩合についてはウソをついてもいい」というのが定説になっているからだ。

3年前に熊本で地震が起きなければ、解散していた

実は安倍氏は「前歴」がある。3年前の2016年。この年は、今年同様、夏に参院選が予定されていた。そして、これも今年同様、安倍氏が衆院を解散して衆参同日選になるのではないか、との観測が出ていた。

その年の2月26日、安倍氏は衆院総務委員会に出席し、同日選の可能性について質問を受けている。そして「現段階では頭の片隅にもない」と答弁している。同様の答弁は、3月29日の参院予算委員会、同日の記者会見でもしている。さらには4月1日、滞在中の米ワシントンでも「解散の二文字は全く、頭の片隅にもない。解散の『か』の字もない」と語った。

この年、安倍氏は衆院を解散しなかった。ただし、それは同年4月熊本で大地震が起き、衆院解散で政治空白をつくるわけにいかなかったため断念したのだ。