人に何かを頼んだとき、どうして言った通りにしてくれないのか。その原因は、あなた自身の言い方や口グセにあるのかもしれない。24の症例とともに、改善するための「処方箋」を明らかにしよう。今回は、心理学者の内藤誼人氏に「必ず否定から入る」について聞いた――。(全24回)

※本稿は、「プレジデント」(2016年10月31日号)の特集「『超』ウケる言い方入門」の記事を再編集したものです。

すぐには答えず、少し時間を置く

自分の言葉が否定から始まってしまうことについて悩んでいるということは、自覚があるわけです。なかには、誰かを否定する言葉を吐きながら、まったく無頓着な人もいて厄介なのですが、自己認識ができているのならまだ大丈夫です。ポジティブに考え、これから直していけばいいのです。

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必ず否定から入ってしまうのは、どうしてなのでしょうか。それは、「フラジャイル・ナルシシズム」のせいだと考えられます。日本語にするならば、「壊れやすい自己愛」。強気な姿勢で、自分に自信があるように見せかけているのですが、実際のところは不安に支配されていることをいいます。

実際には自分に自信は持ちきれていないけれど、上に立つ立場として、何か言わなければいけない。そんな場合に、過剰に否定的に相手を従わせようとしてしまう。これがフラジャイル・ナルシシズムの実態なのです。自分のほうが上だ、相手にケチをつけたいという心理は、弱さの表れといえます。

もっとも否定的なコミュニケーションを起こしやすいシチュエーションが、相手に自分のコンプレックスを刺激されたときです。部下が自分よりもいい実績をあげたときなどがわかりやすいでしょう。さらに、自分を昔いじめていた人、父親や兄弟、同級生に顔や話し方が似ているなどの理由でも、コンプレックスは刺激されます。心当たりがある人もいるのではないでしょうか。

もちろん、否定されて嬉しい人はいません。心理学的にも、否定によってより、褒められることで人の行動はより改善されるとわかっています。実際、否定から話を始めてしまうことに悩んでいる人は、うまく褒められないことにも悩んでいることが多いものです。