※本稿は、「プレジデント」(2016年10月31日号)の特集「『超』ウケる言い方入門」の記事を再編集したものです。
引き出しが少ないから、ワンパターンになる
普段われわれは話をするとき、ワンパターンを嫌い、いつも違う話をしたいと思っているものです。それが気づくと同じ話をしてしまうのは、心理アトラクターが関係しています。テーブルの上でビー玉を転がすと、やがて窪んだ部分で止まる。同じように、心の中で凸凹の凹の部分に当たるのが心理アトラクターです。アトラクターはいくつもありますが、同じ話ばかりしている人は、意識がいつも特定のアトラクターを選んでいるのです。
そうなってしまう理由のひとつは、疲れです。あるアトラクターに落ちそうなところを抗って、別の箇所に向かうのはかなりのエネルギーを要します。疲れているとその努力ができなくなり、結果、話がワンパターンになっていく。朝はいろんな話題の会話ができても、午後になると似たような思考や会話に陥りやすいし、山登りも話題が豊富なのは上りで、下りになると脳をあまり使わないで済むダジャレばかり言うようになります。疲れて脳が楽なものに逃げていくときは、ブドウ糖を補給してエネルギーを蓄えるのが有効です。
そして、もう1つ。同じ心理アトラクターを選んでしまう理由は、その人の持つアトラクターが少ないことが挙げられます。つまり、引き出しがないのです。引き出しを増やすには、普段からいろいろな切り口で物事を眺めるクセをつけること。ニュースを見て「悲しいね」の感想だけで終わらせず、「あの事件もこうだった」「ほかの解釈はないかな」など、あれこれ考えてみる。ひとつの出来事を別の出来事にあてはめて考える水平思考。問題の本質を深く掘り下げる垂直思考。このふたつを軸に立体的な思考が身に付くと、意識が脇道に行ったり、別の方向に転がったりして、同じ話ばかりしなくなります。