人に何かを頼んだとき、どうして言った通りにしてくれないのか。その原因は、あなた自身の言い方や口グセにあるのかもしれない。24の症例とともに、改善するための「処方箋」を明らかにしよう。今回は、人事教育コンサルタントの本田有明氏に「言うことがころころ変わる」について聞いた――。(全24回)
※本稿は、「プレジデント」(2016年10月31日号)の特集「『超』ウケる言い方入門」の記事を再編集したものです。
なぜ言うことがころころ変える上司は嫌われるか
世の中には、相手に何か言われるとすぐに言動を変える優柔不断な人や、その場の思いつきだけでものを言う人、感情の起伏が激しくて、すぐカッとなってそれまでと違うことを言い出す人など、言うことがころころ変わる上司がめずらしくありません。
ある会社に、部下から「織田家康」というあだ名をつけられた人がいました。この人は武将の話が大好きで、読むとすぐに影響を受けてしまうのです。
雑誌で織田信長特集があると、部下への指示も「信長の寺への焼き討ちのように、仕事も素早さが肝心なんだ」となり、徳川家康特集があると、「仕事は『鳴かぬなら、鳴くまで待とう』という精神で、慎重に進めることが大切だ」と変わるのです。
部下たちはその人が「急げ」と言うと「信長になった」、「慎重に」と言うと「家康になった」と笑い、「次にマキャベリの特集が出たら、『目的のためには手段を選ぶな』と言い出すぞ」と言っていたものでした。
仕事にはいろいろな状況があり、それによって対応の仕方も変わってきますから、上司が前回と違う指示を出すのは、ある程度は当然のことです。ただし覚えておいてほしいのは、「部下への指示には3つの段階がある」ということです。
第1は、常に変わることのない、仕事上の基本的な「方針」レベル。
第2はお客や案件ごとに対応を変えていく、「戦略」レベル。
第3は、個別の状況ごとに変わる「戦術」レベルです。