アドバイスは、間を置くと効く
「お客様について、私があれこれいうのは僭越ですが……」と口調は柔らかだが、銀座の水に鍛えられた人間観察のプロであるママたちの金言は的を射たものだ。
「取引先のお客様であろうが、上司、部下、あるいは私たちホステスであっても、誠実に接して親身に話を聞いてくださる方は出世されていきます」と話すのは、「クラブ稲葉」の白坂亜紀ママだ。亜紀ママは早稲田大学在学中から老舗クラブに勤務し、女子大生ママとなり、現在は銀座にクラブをはじめ、和食店、バーなど4店を経営する。
そんな亜紀ママが忘れられない聞き上手な人にヤマト運輸元会長の小倉昌男氏がいる。
「店をオープンした頃から来てくださり、私が駄目なところも失敗した話も、『ああ、そんなことがあったんだ、そうかそうか』って、なんでも受け止めてくださる心の広い方でした。そのときは聞き流しているかのようですが、次に来たときに『でもね、そういうときはこうしたほうがよかったよね』とポツンとアドバイスしてくださる。『使命感を持て』『高い志が必要だ』『これからの水商売の女性は知的じゃないと駄目なんだ』と言葉は短くても、『前回の来店以来、私の悩みを思い出してはちゃんと考えていてくださったんだ』というところに優しさを感じ、ほろっとしてしまいました」(亜紀ママ)
「いい男」は誰に対しても態度を変えない
部下から相談を受けた場合、すぐにアドバイスをするのを避けてみるのも1つの手かもしれない。しばらく温めておいて、「あのときの相談の件だけど」と伝えれば、部下はグッと熱くなるのではないかと亜紀ママは話す。
いい男は自然体。誰に対しても態度を変えず、礼儀正しい人ばかりだという。ユニチカ元会長の勝匡昭氏も亜紀ママにとってさりげなく宝物のような言葉をかけてくれた思い出深い1人。
「若い頃、クラブの先輩を指導しなければいけない立場に悩んでいたときでした。勝さんが『周りは先輩なんだから、ありがとうってニコニコしてればいいんだよ』『出る杭は打たれる、抜きん出れば足を引っ張られる。でもそこでくじけるな、そこで突き抜けてしまえばいいんだ』と、帰り際、お見送りするようなタイミングでさらっとアドバイスをくださることが幾度かありました。一緒に飲みにこられた部下の方に対しても、様子をじっと見て、『彼は何か悩み事があるんじゃないのか』といった気配りをされていました」(同)