では、うまく褒めるためにはどうすればいいのか。真に自分に自信をつけられればいいのですが、一朝一夕にできることではありません。まずは、コミュニケーションを改善していくことが先決です。そのときには、ただ漠然と「褒めよう」と思うだけではなく、自分の中で「ルール」をきちんと設け、実践することが大切です。
たとえば、こんな話があります。ある小学校のクラスでは、連絡帳を使って毎日教師と児童がコミュニケーションを取っていました。担任教師は、児童の日々の行動への注意を書いていたのですが、改善されませんでした。そこで、一人ひとりの児童について「一日ひとつ、必ず褒める」ことをルールとして決めたのです。すると、褒めることで問題のあった児童の普段の行動は改まり、クラスの雰囲気もよくなったのです。会社でも同じこと。褒めることをルールにすることで、部下の嫌なところではなく、いいところが見えてくる。それを会話に活かすことで、コミュニケーションを改善できます。
また、すぐに実践できる方法として「タイムアウト」をおすすめします。否定的コミュニケーションを取る人の中には、他者に何かを言われたときに即座に否定することが、体に染みついたクセになっている人がとても多い。
たとえば部下からの報告があったときは、すぐに答えず、時間を置くこと。日程に余裕があるときは、「明日答える」と返して、仕事を終えて自宅でリラックスしてから翌日に返事をする。その日のうちに返事が必要ならば、コーヒーなりタバコなりで一服入れてから、褒めるポイントを見つけて返事をするようにしましょう。タイムアウトを設けることで、否定的なコミュニケーションを避けられるのです。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
立正大学客員教授。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。『人は「心理9割」で動く 思いのままに心を奪う「心理学の法則」』など、心理学を応用したビジネススキルに関する著書多数。
心理学者
立正大学客員教授。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。『人は「心理9割」で動く 思いのままに心を奪う「心理学の法則」』など、心理学を応用したビジネススキルに関する著書多数。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)