一方、16年に公開された『ラ・ラ・ランド』。冒頭、ロサンジェルス郊外の高速道路で、渋滞した車に乗った人たちが踊り出すシーンから始まる。このあたりのリズムから、ひょっとしたら、と思った。途中、レストランのシーンで、J・K・シモンズが脇役で出演しているのを見て、確信に変わった。

『ラ・ラ・ランド』は、『セッション』と同様、音楽映画である。『セッション』は音楽マニアのいかにも好みそうなこだわりに満ちた映画だった。それに対して、『ラ・ラ・ランド』は、興行的にも成功し、アカデミー賞で史上最多タイの部門にノミネートされた注目作となった。

カルト映画から、メジャー映画へ。たった2年でこのような変身を遂げることができたのは、チャゼル監督自身の才能、努力の成果でもあるし、また、ハリウッドの持つ力でもあると思う。

『ラ・ラ・ランド』は、「夢」がテーマの映画である。そして、「夢」は、それがどのような文脈に置かれるかということで伸びしろが変わる。

やはり、グローバルなスケールで考えたほうが、夢の伸びしろも大きいのだと思う。実際、『ラ・ラ・ランド』は最初から世界各地のマーケットを前提に制作されており、日本でも多くの観客が詰めかけている。

日本国内でトップを目指すのもいいけれども、最初から世界の中での位置づけを考えたほうが、本人も周囲も幸せになる。国も栄える。そんな時代が来ているように思う。そして、夢を大きくふくらませるうえで大切なツールは、やはり「英語」である。

日本にも、ジャンルを問わず、『セッション』のようなコアな価値を持つものはあると思う。ただ、それが『ラ・ラ・ランド』のようなメジャーな舞台に育つ道筋がない。

日本人がもっと普通に英語を使いこなし、日常的にグローバルな感覚で生きていたら。そんな日が来れば、国内にある数々の『セッション』が『ラ・ラ・ランド』に成長することができるだろう。

(写真=AFLO)
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