中学校や高校に行ったときに、子どもたちの話を聞くと、いろいろ面白いことがわかる。中高生の見ている世界は、すなわち未来のこと。今後の世の中の動きを見るうえで、非常に勉強になるのである。

例えば、見方によっては残念なことかもしれないけれども、今の子どもたちには、紙の新聞を読むという習慣が全くといっていいほどない。

また、テレビを見ない、という子も多い。見るとしても、8割がネット動画で、残りがテレビという印象。しかも、テレビ番組もネット経由で接することが多いという。

読む本も、以前とは様変わりしている。古今東西の「名作」を読んでほしいというのは大人たちの勝手な願望で、彼らは自分たちの好きなものに目を向けている。それは、いわゆる「ライトノベル」と呼ばれるジャンルのものだったり、あるいは、ゲームやボーカロイド(バーチャル・シンガー)の世界観を物語にしたものだったりする。

急速に変化する若者たちの価値観の中で、話を聞いていて一番面白いと思い、また気にもなるのが「声優」さんたちの人気である。

中学や高校で「この中で一番オタクの人は?」と聞くことがある。自分で、あるいは仲間に推薦されて前に出てきたその子が「声優」のオタクだというケースは非常に多い。

アニメのキャラクターになりきってセリフを言う声優たちは、若者たちにとっての一番の憧れ、スター。その入れ込み方や熱っぽさ、知識の蓄積ぶりは尋常ではない。

声優さんたちは、一般社会での知名度は必ずしも高くない。一般の大人たちや、雑誌レベルでは、アイドルや若手俳優たちの知名度が高いのだろう。しかし、若者たちはむしろ声優たちを熱狂的に支持している。

昨年は、『君の名は。』や、『この世界の片隅に』といった作品の大ヒットで、アニメ映画が注目されたが、若者たちは、ずっと以前からアニメに熱い視線を注いでいる。その中での「声優」熱は「クールジャパン」と呼ばれるような新しい日本の文化、それに伴うさまざまな経済活動の可能性に結びついている。大人たちも、もっと知っておいたほうがいい。