「阿佐ヶ谷アニメストリート」がオープンしたのは約2ヶ月前のこと。東京・杉並区の阿佐ヶ谷駅と高円寺駅の高架下約120メートルの区間にできたこの新商店街。その後どうなったのか訪ねてみると、これが大変な大賑わいなのである。

同ストリートには現在、コスプレショップや、ギャラリー、カフェ、フィギュアショップ、ミュージアムなど16店舗が入居する。歩いてみると、店舗のディスプレイはオープン当初よりも華やかで、コスプレ姿で散策する10代、20代の女性も多い。(何せ男装コスプレ専門店もあるのだ。)

でも、阿佐ヶ谷といえばジャズの街。なぜアニメなのか。

実は全国に約200社あるアニメ制作会社のうち、約70社が杉並区に集中し、阿佐ヶ谷にも制作会社が少なくない。そこで、アニメを生み出す街として、ジェイアール東日本都市開発が中央線高架下の用地を利用した再開発をしたわけだ。

ストリートを行くと、アニメやゲームのイラストや原作者の作品だけでなく、監督など制作者のトークイベントなど、作り手と受け手が交流できるイベントが盛りだくさんあることに気づく。

例えば、マクロスシリーズやアクエリオンシリーズなどを手がけるアニメ制作会社サテライトがプロデュースするアニメコラボカフェ「SHIROBACO」だ。

ここは声優の卵たちがスタッフを務める。声優の卵がキャラクターになりきって接客するだけでなく、ステージでは公開アフレコなど、彼らが自分たちで企画したイベントを開催している。

少ない需要に対し、過剰供給で狭き門となっている声優業界。ここで企画力や歌唱力、パフォーマンス力を磨き、舞台度胸や接客も身につけるというわけだ。

イベントの様子は「ニコニコ生放送」ともリンクしている。

さらにユニークなのが、来店ごとにスタンプが押される会員システムであること。プロデューサーコース、監督コース、アニメーターコースから選択でき、監督であれば「演出助手→演出→助監督→監督」へとスタンプ数によって昇格していく。声優の卵たちを自分たちの手で育てていくという楽しみ方もできるというわけだ。オープン1ヶ月ですでにファンを獲得している卵もいて、ステージはかなりの盛り上がりをみせていた。

「単にグッズを売るだけじゃなくて、いろいろな角度からアニメと関わりたい人、これからアニメ制作を目指す人にも魅力のある商店街にしたかったんです」

と語るのは、ストリートの総合プロデューサー役も務める作戦本部株式会社の代表取締役、鴨志田由貴氏。

アニメやゲームの制作会社にとって、店舗を構えるメリットはそれほどない。よって最初は軒並み参加を断られ、テナント誘致に骨を折った鴨志田氏だが、秋葉原にはない魅力を持つ商店街にしようというコンセプトを理解するテナントが次第に名乗りを上げ3月29日のオープンにこぎつけた。

「はじめはまったくの手探りの状態でしたが、1ヶ月たってようやくこなれてきた。店舗間のコラボレーションも活発で、早い店舗では週替りで新しいイベントが企画され、それを楽しみに足を運ぶ人も増えてきた」(鴨志田氏)

商店街の壁が真っ白なので、壁全体にアニメを投影する商店街あげてのイベントなども検討されている。