アメリカ大統領に就任したドナルド・トランプさんについて、引き続きさまざまな意見が交わされている。

オバマ大統領任期最後の日の、ホワイトハウス。(写真=AFLO)

確かに、トランプさんの発言は時に危うい。こんなことで大丈夫だろうかと思うこともあるし、アメリカだけでなく、世界の未来は大丈夫だろうかと心配になることもある。一方で、以下のような考え方もできると思う。

すなわち、個人の資質や、その動向で左右されないほどに、現代の文明はシステムとして強靭になっているのだと。

インターネットに象徴される情報ネットワークの発達や、人工知能の進化によって、世界の成り立ちはより安定化している。リーダーの役割は大切だが、それよりも、システムをどう設計するかのほうが重要なのである。

私の友人で、マネジメントや経営者の立場にいる人たちを見ていても、うまくいっている組織ほど、個人の資質では左右されない体制を確立している。その分、トップは自由闊達にものを考えることができるようになっている。

ひとつひとつの経営判断について、トップの決断が影響を与えるような組織は、逆に危ない。むしろ、マネジメントが動かなくてもいわば「自動運転」モードで回っていくようなかたちがなければ、その組織は繁栄しない。

トランプさんは確かにいろいろと問題がある方だが、そのトランプさんでも大統領ができるくらいに国家としてのアメリカというシステムが成熟していると考えれば、そこには興味深い論点が見えてくるように思う。