最近お話しする機会があったある社長さんが、こうおっしゃっていた。イノベーションにはさまざまな側面があるが、最大のイノベーションは、人の働き方にあると。

組織がどのように成り立っていて、その中で人々がどのように働いているかという、いわゆる「組織文化」は、実は真似をしようとしてもなかなかできない。すべてを公開して、この通りですと披露しても、模倣は難しい。

だから、その社長さんは、著書などを通してノウハウを公開されているのだという。会社の業績も右肩上がりで、世間から注目されている存在であるが、言われる通り、その通り模倣することはなかなか難しそうである。

アメリカという国を考えるときに、トランプさんという一人の属性で左右されるほど、システムが脆弱ではないというポイントが重要である。数々のイノベーションを生み出し、多様性のるつぼとも言えるアメリカ。本当に大切なのは、そのようなシステムとしての文化であろう。

一人のリーダーの資質によって組織が変えられると期待するのは現実的ではない。もちろん、リーダーの役割は大切であるが、より肝心なのは、誰がリーダーになっても揺るがないシステムとしての成り立ちであろう。

日本は、システムとして大丈夫か。アメリカと比較して、どこが優れていて、何が足りないのか。そのような冷静な議論が大切であるように思われる。

トランプさんの個人的な資質をあれこれと論じるのは確かに面白いが、かえって問題の本質から目を逸してしまう結果にもなりかねない。

優れたリーダーとは、自分が退任しても大丈夫なように組織文化を育むことができる人だろう。持続可能なシステム思考こそが求められているのである。

(写真=AFLO)
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