今年は、庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』、そして新海誠監督の『君の名は。』という2つの邦画が多くの観客を集めた。これらの作品の大ヒットによって、映画の力が改めて注目されるとともに、「ヒット」が社会を動かし、経済を活性化するという当たり前の事実が再認識された。
ヒットは、どのようにして生まれるのか。
ハリウッド映画などでは、「このように作ればヒットする」という経験則があり、実際にそのようなパターンに沿って脚本が作られたりするという。「脚本はこう書け」という教科書が存在したりする。
もし、ある法則に従ってものづくりをすれば必ずヒットするのであれば、世の中にはもっとヒット商品があふれていそうなものだが、そうでないのは、物事がそれほど単純ではないということを示している。
なぜ、ヒット作の法則を見出し、事前に予想することが難しいのか。根本的な原因は、「ヒット」の背景に、人間の脳に「新奇性選好」という性質があるからだと考えられる。
人間は、今までに見たことがないもの、「新奇性」があるものを好む。生まれて初めて見るものに対して、脳のドーパミンなどの報酬系は特に強く活動する。ヒット作の背後には必ず、この「今までに経験したことがない」という要素が存在する。
『シン・ゴジラ』も、『君の名は。』も、「一体どんな映画なのだろう」と容易には予想できない側面が存在した。だからこそ、人々は好奇心を掻き立てられて映画館に足を運んだ。