事実上の「駅前」は郊外のSC内にある
いずれにしても、これから地方の百貨店の閉店はさらに加速していくだろう。いま東京都以外では人口減少が確実に進んでおり、地方の百貨店を取り巻く事業環境は厳しい。そのとき駅前市街地はどうなるのだろうか。政府は「コンパクトシティ政策」で、活性化を呼びかけているが(※2)、現時点では非常に難しいと言わざるをえない。
地方では、すでにSCが「駅前」の代わりになっている。閑散とする駅前市街地に対し、SCのなかには市役所や郵便局、病院などが揃いつつある。しかも不便な駅前市街地まで出て行かなくても、SCのなかに「疑似駅前」や「コンパクトシティ」ができているのだ。
駅前市街地はSCとの競争に負けてしまっている。だからこそ地元自治体は百貨店に期待を寄せるのだが、百貨店だけでは衰退は止められない。むしろ百貨店が我先にと撤退している。古くからある市街地は過去のしがらみが多く、それを解きほぐすには多大なコストが生じる。しがらみの少ないSCに、ヒト、店、カネが集まるのは当然のことだ。
地方の市街地を活性化するには、何らかの新しいノウハウが必要だ。まだ可能性はある。
たとえばホテル業界では星野リゾートが、経営難に陥っていた老舗旅館の再生に成功していると言われている。これは世界トップクラスの経営ノウハウを地方に投入した結果だ。所有と経営を分離させることで、柔軟な施設運営を実現している。地方の市街地にもそうした手段が有効かもしれない。
日本銀行の「マイナス金利」の影響で、現在はカネ余りの状況にある。求心力のあるアイデアが出てくれば、投資を集めることは難しくない。現状維持でこのまま死を待つのか。それとも外部とのパートナーシップによって再生を志すのか。百貨店だけに努力を求めるのであれば、空洞化は避けられないだろう。
※1:「コーポレートガバナンス・コード」の内容は、東京証券取引所のウェブサイトに掲示されている。http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/
※2:コンパクトシティ政策では「集約都市形成支援事業」という名目で財政支援を受けられる。http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_machi_tk_000054.html