【弘兼】平日の午後にもかかわらず、たいへんな賑わいですね。さすがは日本一の百貨店です。

【大西】お陰様でこの店は2014年度2585億円の売上高でした。ひとつの店舗としては日本一だと思います。

三越伊勢丹ホールディングス社長 大西 洋(おおにし・ひろし)
1955年生まれ。79年慶應義塾大学商学部卒業、伊勢丹入社。紳士服の販売員からキャリアをスタートし、プロジェクト開発や店舗開発を担当。2003年には紳士営業部長として伊勢丹新宿本店の「メンズ館」をオープンさせる。08年に三越と伊勢丹が経営統合。09年に伊勢丹社長に。12年より現職。

【弘兼】ただ百貨店は「冬の時代」ともいわれています。

【大西】市場規模は90年代半ばから縮小し、業界全体で約10兆円あった売上高は、現在では約6兆円です。

【弘兼】原因をどう分析していますか。

【大西】以前は小売業のなかで百貨店は独自の位置にいました。グレードの高いものを売るだけではなく、売り場にエンターテインメント性があった。それが「カテゴリーキラー」の登場で同質化してしまいました。

【弘兼】ユニクロやヨドバシカメラ、ニトリのような企業ですね。一方で、「安くはないが、欲しくもない」という中途半端な商品しかない百貨店は、軒並み潰れてしまいました。

【大西】特に地方では、中心市街地の空洞化が進んだこともあって、百貨店が淘汰される例が相次ぎました。

【弘兼】たしかに人が集まる場所は、街中の百貨店から、郊外の大型ショッピングセンターに変わりましたね。

【大西】首都圏の場合は、鉄道会社が、駅の直上や近くに、若年層対象の商業施設を開発しました。ファッションに特化した「セレクトショップ」などが成功しています。