いつどこにでも、感じの悪い人はいるものです。最近では舛添要一前東京都知事でしょう。舛添氏に向けられた疑惑そのものは、小さな、言ってしまえばセコいものばかりでした。それでも非難を集めたのは、都民に説明する姿が「感じが悪かった」からにほかなりません。
では、どうして人は「感じが悪い」と思われてしまうのか。理由として、3つの「不」と3つの「慢」を持っていることが挙げられます。3つの「不」とはつまり不満、不安、不和。3つの「慢」とは傲慢、慢心、自慢のことです。すべてでなくともこれらのいくつかが現れていると、周囲から感じが悪いと思われるのです。
まず、「不満」とは自分自身への過大評価から生まれます。「私はもっと凄いんだ」というプライドが高い。だから、昇進や処遇に不満を持ち、怒るわけです。古代ローマの哲学者・セネカは、「怒りは己に対する過大評価から生じる」と言っています。舛添氏は怒りが表情によく出ていましたね。会見を見ていても瞬きが驚くほど多い。これは運動性チックといって、内心に怒りや欲求不満が渦巻いているときに現れるのです。海外視察での高級ホテルの利用が問題視されましたが、舛添氏は、都市外交に力を入れていた。なぜかといえば、自分は都知事にとどまる器ではなくて、国政に関わる仕事をする人間だというプライドがあるから。国際政治学者としてメディアで重用され、一時は首相候補と言われた人です。それが都知事として、こんな「瑣末な問題」でバッシングされている。そんな不満が顔に現れた。
しかし不満はあれど、都知事という肩書は捨てがたいもの。その立場が揺らいだときに「不安」が湧き上がった。誰しも、金銭や役職を失うことの恐怖からは喪失不安が生まれ、防衛機制が働きます。そうして、自分を守るために他人を攻撃したり、異常にセコくなったりするのです。
3つめの「不」が「不和」です。不和つまり仲違いするのは、他人への想像力が欠如しているからで、周囲からの印象は非常に悪い。舛添氏は、私生活で離婚を2回し、愛人に隠し子もいました。シングルマザーや婚外子の生き辛さに思いが至らない。また自分はエリートだから許される、とでも考えていたのでしょうね。
そんな「傲慢」も感じが悪い人の特徴です。舛添氏の会見はいつも上から目線で傲慢でした。さらに「慢心」が彼の身を滅ぼしました。政治とカネの疑惑も、過去に許されたし、他人も許されたのだから許されるはずという考えがあった。公私混同を問われた「ホテル三日月」の領収書問題にしても、「石原慎太郎元都知事はもっと酷かった、なぜ自分だけが……」と思っていたことでしょう。くわえて、根底にある承認欲求や賞賛欲求が「自慢」につながり、反感や敵意を買ってしまったのです。
舛添氏のような感じの悪い人が上司になったらどうすべきでしょうか。残念ながら、他者への想像力が及ばない性格や攻撃性は直りません。言われたことは記録に残すこと。メールのやり取りなど証拠があれば言いがかりにも対応できます。組織のなかで感じの悪い人と一対一にならないよう、周りと共闘することが大切です。ただ、感じの悪い上司は往々にして部下にスパイを紛れ込ませているので要注意。酷い場合は戦わず、他の上司に相談しましょう。