今や、残業するほど仕事ができないと思われる時代。限られた時間で最大の成果を出すには──。経営トップ、心臓外科医、3つ星シェフ……斯界のプロにそのテクニックを聞いた。
エラーを悔いても成長はしない
仕事に着手するとき、うまくいくだろうかと足踏みしてしまう。あるいは、昨日の失敗にくよくよして次の仕事が手に付かない。何かしらの精神的なプレッシャーがあると仕事の取りかかりは遅くなり、着手してからの仕事のスピードも上がらない。
メンタルが仕事の能率を左右している部分は大きい。
「それはスポーツ選手でも同じです」と話すのは、メンタルトレーナーの高畑好秀氏。高畑氏は数多くのプロ野球選手やJリーガー、プロゴルファーなどのメンタルトレーニングを担当してきた。
「たとえばプロ野球選手が、さっきエラーしたことを悔やんで、また今度エラーしたらどうしようと体が動かなくなることがあるんです」
エラーのショックを引きずって、体がこわばったり、行動が遅れたりすれば、そのことでまたミスを犯しかねない。重要度の低いことに悩み、失敗を重ねてしまうのはなんとも皮肉な話だが、ビジネスの世界にもよくある。
高畑氏は、プレーが上達する選手は失敗よりも成功の経験を強く覚えているものだと言う。「選手生活を振り返って、成功と失敗のどちらの経験が多いかと尋ねると、一つのミスに意識を払いすぎている選手は『失敗』と答えますし、ポジティブな選手は『成功』と返してきます。10人いれば2人が成功、8人が失敗と答えますね」
ポジティブに考えられれば、エラーが後を引かないので、思考がすぐに次のシーンへと向いていく。だが、ネガティブ思考だとエラーが気になってしまい、考えが先に進まないのだ。当然、次への備えが遅くなる。
どうやったら、ポジティブ思考に転換できるのだろうか。
「失敗を反省するのではなく、成功を反省するのです」と高畑氏はアドバイスする。