今や、残業するほど仕事ができないと思われる時代。限られた時間で最大の成果を出すには──。経営トップ、心臓外科医、3つ星シェフ……斯界のプロにそのテクニックを聞いた。

コピペ思考はもはや通用しない

明日はお客さんに提案書を持っていく日。でも、内容がまったく思い浮かばなくて手は止まったまま。魅力的なコンセプトを打ち出したいのに、アイデアがまったく降ってこない……。

誰でも1度や2度はそんな経験があるだろう。とくに慣れない仕事、プレッシャーが大きい仕事は、頭の中が真っ白になりやすい。時間をかけないで、「これだ!」と思わず膝を打つようなひらめきを得る方法はないだろうか。

「効率だけ重視すれば、既存のアイデアを失敬する“コピペ思考”が一番。しかし他人の真似事は、いまの高付加価値が求められる時代には通用しません。良質のアイデアが効率よく浮かぶ方法として、私が提唱しているのがフューチャーマッピングです」

そう語るのは、本稿で紹介するメソッド『ストーリー思考』や『稼ぐ力』などの著作で知られる経営コンサルタントの神田昌典氏。

経営コンサルタント・作家 神田昌典氏

神田氏は、10年以上にわたって顧客に製品やサービスの企画を提案してきた経験から、自らの発想法をパターン化して知識創造メソッドに高めた。その一つがフューチャーマッピングだ。

「本当にいいアイデアは、従来の視点からは思いつかない。視点を変えることがまず必要です」

フューチャーマッピングでは、設定した課題に対し、それを成功に導くための未来のストーリーを創造する。それが50年の人生設計でも、新製品企画でも、あるいは今日1日の過ごし方でもやり方は同じだ。

まず、大きな紙の左下に<現在>を定め、紙の右上にはその計画が到達する<未来>を定める。横軸は時間の経過、縦軸は成功実感を示す<ハッピー>の度合いだ。そして、左下の<現在>から右上の<未来>まで、山あり谷ありの曲線を描く。最終的には満足度の高い<ハッピー>な状態にたどり着くという成長ストーリーをイメージする。