今や、残業するほど仕事ができないと思われる時代。限られた時間で最大の成果を出すには──。経営トップ、心臓外科医、3つ星シェフ……斯界のプロにそのテクニックを聞いた。

仕事完了までのムダな時間を探す

仕事の最中に「どうしていつも予定より遅れてしまうんだろう」と思うことはないだろうか。2時間で終わるはずの仕事が3、4時間かけても終わらないケースだ。

着手から完了までのリードタイムを少しでも短縮したいという気持ちは、多くのビジネスマンが抱いているはず。そのためには仕事にかける時間を見直し、ムダを省く必要がある。

「まずリードタイムの中から、待ち時間を探し出して削ることですね」とアドバイスするのは、経営コンサルタントの鈴村尚久氏だ。

エフ・ピー・エム研究所所長、経営コンサルタント 鈴村尚久氏

鈴村氏はトヨタ自動車で購買や産業車両の営業に携わり、トヨタ生産方式のエッセンスを仕事に応用して高い成果をあげた経験がある。40代で独立してからは、メーカーを中心に製造、販売、物流など一貫したプロセスの改善指導に当たっている。

「トヨタで10年ほど、船便で海外に部品を運ぶ仕事に携わったことがあります。そのとき痛感したのが、船会社によって異なる出港頻度の差。仮に週1度の出港ならタイミングが悪くても1週間の待ち時間ですみますが、2週に1度なら最悪2週間待たされる。航路の短さや船の速度より、待ち時間のほうが大きな問題になります」

つまり、便数の多い船会社を選び、出港のタイミングに合わせて出荷するのが、待ち時間を減らす最適な方法となる。

待ち時間はオフィスの仕事でも発生する。たとえば、部下に作成を頼んだ資料がすべて揃わないと、仕事に取りかかれないケース。今日中に完了させたかったのに、すべての資料が上がってきたのが夜なら、明日に持ち越してしまう。自分の作業時間はわずかでも、待ち時間が多いと最終的にリードタイムは延びてしまうわけだ。

待ち時間を減らすためには、相手の能力や仕事のやり方を見込んだうえで仕事を発注する必要がある。いつもギリギリになって資料を上げてくる部下であれば、余裕をもって締め切りを設定しよう。

1つの仕事を複数人に分担して依頼するのも手だろう。1人の部下に3つの資料を用意させていたなら、3人に1つずつ資料の作成を頼んでみる。これなら一気に待ち時間を短縮することが可能だ。