このデザインを僕が最初に手がけたのは1990年。そこから洋菓子の味や原材料が変わるごとに手が加えられたので、だいぶごちゃごちゃになった。それで25年の時を経て、お菓子の中身だけでなくデザインも全面リニューアルすることになりました。
資生堂パーラーのお菓子はスーパーやコンビニではなく、デパートを中心に置いています。大手のお菓子メーカーに比べ、やや年配でリッチなお客さんが多いのが特徴。最初にデザインを手がけたときに意識したのは、彼らに斬新かつゴージャスな印象を与えることでした。
たとえば、商品を入れる手提げ袋は、青地に金色を組み合わせました。当時、食品のパッケージに青を使う会社はなかった。カビを連想させるからと、タブー視されていたんです。青を使うという斬新さを残しつつ、青が放つ毒々しいイメージをなくすため、金色を「S」のロゴと縦のラインに使っていました。
しかし、こうして今見るとド派手な袋でさえ大人しく感じます。派手なデザインがほかにも登場して、目立たなくなってしまったんですね。
もう一度新しさを感じてもらいたい。リニューアルのコンセプトには、「銀座アヴァンギャルド」を掲げました。アヴァンギャルドは前例がないという意味で使われることの多い言葉ですが、僕が意識したのは芸術運動の「ロシア・アヴァンギャルド」。ロシア革命のプロパガンダに使われた絵やポスターのデザインが大好きで、リニューアルではそのころのレトロな風合いを取り入れています。