ロッテからデザイン依頼を受けた2006年、僕はまだ20代で、パッケージデザインを手がけたこともなかった。求められたのは、まったく新しい視点で、新しい価値観のガムを打ち出すことでした。
当時はキシリトールなどの「歯にいいガム」が主流。「ACUO」などの「口臭除去ガム」は目立たない存在でした。もともとは、その狭いマーケット内で、口臭対策用のガムとしてロッテが推していた「FLAVONO」を若者向けにリニューアルし、シェアを伸ばすことを目指していました。
統計データ上からも、若者の口臭対策用ガムの購入率が高くないことはわかっていた。なぜマーケットが発展しないのか。その理由を探るために、ガムの成分やパッケージだけでなく、そもそもガムとは何かというところまで立ち返る必要がありました。そうして考えを進めていけばいくほど、既存の商品の延長線上をたどることに限界を感じ、ゼロから新しいブランドを作ることを決めました。
新しい市場を開拓するには、結局、ユーザー目線に立つことです。そこで僕らが出した答えは、「あえて一歩引いた大人しい表情にすること」でした。