バックパッカーをしていた学生時代、アジア各国で「メード・イン・ジャパン」の製品を何度となく目にしました。まったく知らない異国の地で見た日本製品は格好よかった。旅先で出会った人から「おまえたちの国はすごいな」と声を掛けられると、誇らしい気持ちにもなった。メーカー業をやりたいと思ったきっかけです。

デザインした人 ブレイン 代表取締役 天毛伸一

それでも最初からいきなりモノづくりをするには、資本もコネもなかった。まずは収益を安定させるため、少ない資本でも取り組める企業向けのメール配信サービス事業に注力しました。そこから10年が経ち、ようやくモノづくりをはじめようというときに、たまたま行ったのが知り合いの飲食店。そこには20年前と変わらない台形のレジがありました。あまりにも進化のないレジの姿に疑問を抱き、知り合いの店主に聞くと、インターネットと連携するタイプの「POSレジ」というものもあるけど、初期費用と維持費が高く、導入できないという。調べてみるとPOSレジ業界は大手3社が市場を独占していて、20年ほど新規参入がない状態。それで、「この分野で勝負しよう」と思い立ちました。

世に出回っているPOSレジは「でかい」「ダサい」「値段が高い」。そこで考えました。新規参入で品質を追い求めてもノウハウが蓄積できていないので勝つのは難しい。だったら圧倒的にデザインの格好いいものを作って安く提供してやろうと。

上から見るとコンパクトな長方形の箱に見える――。見た目の理想を自分でラフに描き起こし、当時普及しはじめていた「iPad」のようなタブレット端末を使って、新しいレジを作ることを決めました。