しかし、そう簡単にはいかなかった。まず、上から見て長方形にするためには、レシートの吐き出し口を従来の「縦向き」から「横向き」に変える必要がありました。横からレシートが出るような構造は、紙詰まりが起きやすくなります。しかし、従来のように縦向きにすると、レシートのロールも縦にセットされるので、理想としたコンパクトな長方形の箱を完成させることが難しくなる。開発側からは「無理だ、やめてくれ」と言われながら、何度も押し問答をした末に、この横向きの吐き出し口は実現しました。

コストの高さも大きな壁でした。最も低いコストで仕上げるには、中国の部品メーカーから仕入れる必要があった。さらに、国内で組み立てるための工場も必要になる。それ以前に、まず小ロットから請け負ってもらえる製造業者が見つからない。請負からプロデュースまでできる協力者が必要でした。行き詰まったところで、雑誌を見て知った中国の企業に電話をすると日本支社があることを知った。住所を聞くと、なんと当時の会社の隣のビル。代表の方にプランと想いを伝えると、すべての条件を満たし、引き受けてくれることに。偶然の出合いも重なり、メーカーとして第1弾の製品は完成しました。

世界も注目! IT企業発のレジが業界に新規参入

本体ディスプレーにAndroidタブレットを採用した日本初となるPOSレジ。本体価格12万8000円、月額費用9800円。従来のPOSレジのサイズに比べ、本体サイズは1/2に。350店舗以上の飲食店に導入されている(2015年10月時点)。世界的なデザインアワード「Red Dot Award」にてソニー、マツダなどと並んで「ベスト・オブ・ザ・ベスト」を、2014年度グッドデザイン賞をそれぞれ受賞。

 
天毛伸一(ブレイン 代表取締役)
1974年、兵庫県生まれ。学生時代からバックパッカーとしてアジア諸国を歩き、大阪市立大学商学部卒業後に渡米。2001年、個人事業主として創業。メール配信サービスをはじめる。03年、法人化に伴い、現社名であるブレイン株式会社に変更。提供サービスの契約数は7200社。
(構成=金井 悟 撮影=佐藤新也)
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