発売1年で2億食を売り上げた東洋水産の「マルちゃん正麺」。小売り店頭で品薄状態が続いたほどの超人気商品である。なぜ、競争の激しい袋麺市場で、このような大ヒットが生まれたのだろうか。

カップ麺より手間のかかる袋麺が大ヒットした理由

ラーメンを愛好する日本人は多く、インスタントラーメンも年間55億3000万食(生産数量、2011年、日本即席食品工業協会調べ)とよく売れている。しかし袋麺の生産量は、1972年の37億食をピークに、徐々に下落してきた。10年には16億8800万食まで落ち込み、最低を記録している。これは71年9月に登場したカップ麺の売れ行きが影響しているからだ。カップ麺は発売から18年で袋麺を凌駕し、10年には34億7000万食となり、即席麺全体に占めるシェアも65.4%と過去最高を記録している。同商品は、調理の手間のかかる袋麺に比べずっと簡単、便利だからである。

ところがこの長期低落傾向にあった袋麺市場に革新的な商品が誕生した。東洋水産の「マルちゃん正麺」である。この商品は、11年11月に発売以来、わずか1年で2億食を売り上げ、希望小売価格ベースで約200億円の売上高を達成した。これは同社の予想の倍となる数字で、小売り店頭では品薄状態が続いた。

なぜカップ麺より手間のかかる袋麺が大ヒットを遂げたのであろうか。今回はこの秘密に迫ってみたい。

袋麺をはじめとするインスタントラーメンは元来、しっかりした「食事」というよりは小腹がすいたときに即時的に空腹感を癒やすための便利な食べ物、あるいは非常食という位置づけで、限りなくスナック(軽食、間食)に近いものだった。家に買い置きをしておいて、主婦が1人で昼食時に食べたり、子供がおやつ代わりや夜食として食べたりするものだったのだ。

このような簡便なスナックというコンセプトを打破し、完全な「食事」としての満足度を上げることを目指したところに、「マルちゃん正麺」の革新的なところがある。