デザイン事務所を立ち上げた1997年当時、僕はデザインを取り巻く状況に違和感を感じていました。デザイン業界では、実用的ではなく使いづらい商品でも、1つの流行としてもてはやされる。その結果、デザイナーも業界に向けてデザインするようになり、斬新さを帯びた商品ばかりが、「いいデザイン」と世の中に認識されるようになる。しかしそれは、本来のデザインではないのではないか。もう一度デザインについて考え直したいと思うようになっていきました。

デザインした人 デザイナー ナガオカケンメイ

そこで目を向けたのが、長く使い続けることができる「ロングライフデザイン」という概念です。「時間軸」という絶対的な基準をクリアした商品を見つめることで、普遍性を持ち、しっかりと売り続けることができ、使い続けることのできるデザインが見えてくるのではないかと考えました。そうして2000年、ロングライフデザインをテーマにした「D&DEPARTMENT PROJECT」を立ち上げ、東京の世田谷に「D&DEPARTMENT」という400坪くらいのショップをつくりました。

この店舗で扱っているのは、発売から30年以上、人々に親しまれて残り続けている商品ばかり。それら普遍的な商品の魅力をありのままに伝えることのできる、「ちゃんと買いたい人が、ちゃんと買える場所にする」ことを目指しました。過剰な演出を避け、商品そのままの魅力を伝えるため、店内にある1500点以上の商品は何てことのないスチールシェルフの上に並べるだけに留めています。