ブランド論の原点「ニューコーク事件」とは

ブランドは、会社と生活者とのあいだのコミュニケーションの媒体である。だが、それが媒体として会社戦略の中核として位置づけられるようになったのは、それほど昔のことではない。ブランドという概念が会社の経営の喫緊の課題とみなされるようになったのは、ニューコーク事件だったと言われている。その事件とは、四半世紀ほど前、アメリカにおいてコカ・コーラ社がそれまでのコークに代わって新しいコークを発売し、それゆえにアメリカの消費者の大きい反発を呼んだという事件である。

その当時、コカ・コーラはペプシに追い上げられていた。そこで、同社は大規模な消費者調査を行い、そこで高い評判をとった新コークを満を持して発売した。だが現実は、同社の目論見とも、また調査結果とも違っていた。消費者は、大規模調査において味では敵わないとされた旧コークに味を戻すことを望んだのだ。そして結局、同社も旧版に戻すことになった。

消費者の抵抗により、コカ・コーラ社の思惑は外れてしまったわけだが、そのことは、「コカ・コーラ」はあまたある単なるソフトドリンクスの一つという存在ではなく、アメリカの消費者にとって人生においてなくてはならない「かけがえのない存在」になっていたことを意味していた。