本の装丁を始めてから30年が経ちました。装丁の仕事では、ノンフィクションや実用書、エッセイなど、依頼に応じて様々な内容の本を手がけます。ただ、どのようなジャンルであっても装丁の根拠は本の内容にある。私はそう考えています。ですから、装丁を手がける本の原稿がなければ始まりません。他の仕事とやりくりしながら1カ月くらいのうちに原稿を読み込み、そこにある「個性」を探り、それをいかにまっすぐ伝えられるかを考えます。

デザインした人 デザイナー 鈴木成一

『あの日』の場合は、小保方晴子さん本人による切実な手記、ということが本のすべてでした。人は「小保方晴子」という名前を見ただけで、一連の「STAP騒動」を頭の中に思い描く。そのため、『あの日』という本のタイトルがついてはいるものの、「小保方晴子」という著者名をいかにまっすぐ見せるかが最も重要でした。余計なことをすれば本の性格がぼやけてしまう。そう思い、真っ白なカバーの真ん中に『あの日』というタイトル、そして「小保方晴子」という著者名をただ一列に並べています。