日本の総合化学業界の景気は悪くない。それどころか、今期は東レや旭化成、東ソーにクラレなど、過去最高益を更新しそうな企業がいくつもある。
理由は企業によって違うが、1つは川上の構造改革と川下の機能品の拡大である。円安もあり需要は堅調なので、業績に反映されている。
一方、中国がここ数年、化学製品の生産能力を過剰に伸ばしており、その影響を大きく受けている企業もある。ポリエステル繊維やペットボトルの原料である高純度テレフタル酸などは、需要は伸びているものの、中国などの大増設により生産能力過剰に。その余波で、売上高国内1位の三菱ケミカルホールディングスなどが製品の値下げや減産など、厳しい状況に追いやられている。
ただ三菱ケミカルHDは、持ち株会社の傘下に置いている三菱レイヨンと三菱樹脂、三菱化学の3社を統合させ、樹脂や繊維といった素材の川下でビジネスをやっている企業と三菱化学の高い技術力とをしっかりつなげようとしている。要は、マーケティングをしっかりやって、技術をお金に換えていくということだ。総合化学業界は伝統的にあまりマーケティングに力を入れてこなかったので、この取り組みは評価できる。
ほかに面白いのは、先ほども挙げた東ソー。電解のイメージが強かったが、今はバルクの技術を基に、セラミックス製品など成長性の高い機能商品を数多く作っている。
世界的な動きでは、先ほども述べた中国の余剰生産能力の問題が大きいが、人件費も上昇してきており、新興国のメリットは薄れている。さらにTPPの締結で、競争環境のルール作りがきちんとなされれば、日本など先進国にとっては新興国と同じ土俵で戦える環境になってくる。
日本の総合化学企業も、ここが勝負どころだ。
(構成=衣谷 康)