2015年12月、総務省は携帯電話料金引き下げ等に関する取りまとめ(案)を公表。(1)携帯をあまり使わないライトユーザー向け料金プランの導入、(2)「実質0円」など過大な端末購入補助の是正、(3)格安SIMのサービスなどを提供しているMVNO(仮想移動体通信業者)各社による競争促進、などがポイントだ。

大手通信3社の今後の施策にもよるが、各社営業利益への影響は限定的であろう。ライトプランの導入による減収影響は販売奨励金の削減によりオフセット可能である。また、「実質0円」などの端末販売手法が禁止されれば端末販売台数は減少が想定されるものの、そもそも端末販売で大きな利益をあげてはいない。

以上を踏まえると、MVNOによる競争促進が今後の通信各社にとっての脅威になりそうだ。すでにMVNOの代名詞である格安スマホは台頭しつつある。MM総研の調べによると、15年3月時点で格安スマホなど「独自サービス型SIM」の契約回線数は326万回線。1億5722万回線(総務省)のモバイル市場全体から見れば2.1%にすぎないが、前年同期の1.2%から大幅に増加し存在感が増しており、今後も格安スマホへのシフトが予想される。

国内人口は減少基調に入り、純粋な通信料収入だけでみれば明るい材料は多くない。通信料収入においてはいち早く携帯とブロードバンドのセット割引「auスマートバリュー」により顧客囲い込みを推進したKDDIが相対優位にあるが、今後各社は動画サービスやショッピングの決済機能など、世の中の消費行動をモバイル経由にすることで収益拡大を狙っている。

16年のモバイル市場は、大手同士の競争に加え、大手対格安スマホの競争もある。対格安スマホでは、大手の利便性やサポート力と価格のバランスが重要になりそうだ。

(構成=衣谷 康)
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