石油元売り2位の出光興産が、同5位の昭和シェル石油の株33.3%(議決権ベース)分を英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから取得することを決めた。

成熟化している石油市場にとって、プレーヤー数が減ることは、需給バランスの改善が期待できる。この統合が業界再編を触発させる効果もなくはないだろう。

しかし、統合しても収益性を高められなければ意味がない。出光と昭和シェルは、企業文化が大きく異なるし、両社の製油所は隣接していない。原料やナフサ、半製品の効率的な活用、物流の合理化、販売経費の削減などで収益性を高められるかどうかは今後の両社の努力次第だ。

日本の石油市場は、内需の減少と過剰設備という構造的な問題を抱えている。車離れに加え、小型車ブームや低燃費車が普及してガソリンスタンドを利用する機会が減っており、それに対し設備費のウエートが大きい。設備と体制をスリム化して、固定費を削減することが喫緊の課題だ。

海外事業に関しては、石油精製の技術は世界で標準化されており、技術力で海外他社と差別化することは難しい。

さらに、将来的にいえば、石油製品に代わる柱を探さなくてはならない。出光は石油化学や大型火力発電などに加え、海外では豪州の石炭やベトナムの石油精製など幅広い分野に事業を展開しているが、大きな収益を上げるには至っていない。昭和シェルは太陽光パネル事業に力を入れているが、こちらも同様だ。業界1位のJXホールディングスも、出光と同様に天然ガス開発や銅鉱山事業など多角化を進めているが、やはり、大きな柱にはなっていない。

まずは、統合を含め、各社が財務体質をよくして費用対効果のよい投資を心がける。石油市場の抱える課題を解決するには、まずここから始めることが先決だろう。

(構成=衣谷 康)
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