お金が貯まる人、貯まらない人の違いはどこになるのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「キャッシュレスの比率が4割を超えた。便利な決済手段だが、この便利な一面が落とし穴になっている」という――。
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キャッシュレス化が一気に進んだ

日本のキャッシュレス決済比率がいよいよ4割を超えた。

経済産業省が3月31日に発表した2024年の数字は、42.8%。当初2025年6月までとしていた政府目標を前倒しで達成したことになる。2017年時点では21.3%だったので、それから約2倍になったわけだ。

キャッシュレス決済手段の内訳を見ると、こちらも興味深い。クレジットカードが82.9%でトップ、続いてコード決済が9.6%と1割近くまで上がった。デビットカードは割合こそ3.1%だが、7年前からほぼ倍増している。

しかし、電子マネーは2017年に比べ約半減となり4.4%に落ち込んだ。これを見ると、キャッシュレスの勝ち組負け組がはっきりしたと言っていい。今や、クレジットカード、コード決済、デビットカードが、消費者の生活費を押さえつつある。

日本のキャッシュレス化が一気に進んだ理由は、大きく二つある。一つ目は、キャッシュレスにするとご褒美がもらえますと政府が派手にアピールしたことだ。2019年の「キャッシュレス・ポイント還元事業」、続いて2020年の「マイナポイント事業」でポイントを大盤振る舞いした。

今もあちこちの自治体で、キャッシュレス決済でのポイント還元事業を定期的に実施している。物価高対抗策にポイントをためたいという消費者マインドも、それに有利に働いただろう。

「キャッシュレス=無駄遣いの温床」説は本当か

もう一つは新型コロナ禍による現金離れである。コロナの蔓延期間には、人とやり取りしないセルフスキャンレジの導入、飲食店でのモバイルオーダー決済、実店舗ではなくネットショッピングへのシフトなどが進み、財布を開かないことが増えた。

行動制限が解除された2023年には、キャッシュレス比率はすでに39.3%まで上がっていた。コロナこそ国の目標を強力に後押しした、影の立役者と言えるだろう。