交渉というと一般的には他人との交渉を意味するが、それを成功させるにはまず自分との「交渉」がうまくいかなければならないとエリカ・アリエル・フォックス氏は言う。
「私はハーバード大学ロースクールで交渉学を学びましたが、実生活でそれを適用しようとすると〈すべき行動〉が頭でわかっていても実際にはそれと違う行動をとってしまうことが多かったのです」
そのギャップを追究するべくフォックス氏は「ハーバード交渉学内面戦略所」を設立した。そこで多方面の学者の英知を集め、人間の行動と内面の統合を研究し、その成果をまとめたのが本書である。
「人間は誰でも生まれつき『ビッグ4』という異なる4つの人格を持ち合わせています。それをうまく機能させることができると、交渉で失敗することはありません」
そのビッグ4とは夢想家、思考家、恋人、闘士の面で、たとえば「夢想家」の面が強すぎて「思考家」の面がおとなしいとビジョンは素晴らしいが、客観性に欠けた交渉に終始してしまうという。
「最近の脳科学でも脳がこの4つの機能を果たすようにできていることが証明されています」
もっとも賢明な決断は、この4つの面がバランスよく機能したときにできるとフォックス氏は言う。
「そのバランスを崩すと精神的に疲れてしまい、全体像を見失います。バランスをとるのは試練ですが、意識的に訓練すると誰にでもできるようになります」
企業で決定権を持つのは社長だけではない。
「プロジェクト・リーダー、将来そういう地位に就く若者などすべての人に読んでほしいと思っています」