東京電力と中部電力による火力発電事業の共同出資会社JERAが、4月末に発足。来年4月の電力小売り全面自由化で、電力市場は通信など異業種のほか、大手電力が地域を超えて顧客を奪い合う大競争時代に入る。海外では自由化に伴い再編も起きたが、国内におけるその先駆けとなるJERA社長に就任したのは、中部電出身の垣見祐二氏だ。

JERA(ジェラ)社長 垣見祐二(時事通信フォト=写真)

垣見氏は燃料畑が長く、業界では「当然の人事」(大手電力)との受け止め方が多い。東電と中部電は燃料調達や輸送、火力発電所の新設や建て替え、海外の発電事業などを順次統合していくスケジュールを示した。皮切りとなるのは、今年10月の燃料輸送事業と燃料トレーディング事業の一本化だ。垣見氏は中部電で、米シェールガス輸入の決定や石炭調達部門のシンガポール移管に携わった実績がある。2017年春頃、両社は既存の火力発電事業を統合するか判断する予定だが、それに向け実績を積みたいという意向が働いた。

両社の既存火力の統合が実現すれば、LNGの調達で年間4000万tになり世界最大級の買い手となる。調達費の引き下げにつながるため、東電は前向きだ。ただ、中部電の中には「東電は半国有化状態。あまり深入りすると中部電本体に政治リスクが及ぶ」(幹部)との懸念もある。国の関与を小さくするため東電の経営再建が進むかどうか。垣見氏が燃料事業に加え、今後統合される海外事業などを軌道に乗せられるかどうか。この2つが、エネルギー業界の再編を占ううえで注目点となる。

JERA(ジェラ)社長 垣見祐二(かきみ・ゆうじ)
1952年生まれ。和歌山大学卒。77年中部電力入社。執行役員、取締役専務執行役員などを経て2015年4月JERA社長に就任。
(時事通信フォト=写真)
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