なぜ「太陽光バブル」が起こったのか
太陽光などで発電した電気を電力会社が購入する再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が曲がり角に差し掛かっている。2014年9月以降、北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社が、再エネ発電事業者からの電力系統(送電線)への新規接続申し込みに対する回答を一時的に保留。これを受けて、経済産業省は接続可能量の検証に着手、さらには固定価格買取制度を抜本的に見直す方針を打ち出しているからだ。
これは太陽光発電の買い取り申請が増えすぎたからにほかならない。2012年7月のスタートから2年余りで全国の太陽光発電計画は7000万キロワットを超えた。このうち九州電力を例に取ると、2014年7月末の段階で設備認定量は1900万キロワットを超え、接続の本申し込みも1260万キロワットに達している。この数字は電力需要の少ない春や秋の昼間に同社において必要な800万キロワットを上回り、これ以上はいったん保留し、安定供給に支障がないか確認しなくてはならない状況になった。
こうなってしまった背景を電力中央研究所の朝野賢司主任研究員はこう解説する。
「日本の買い取り価格が高すぎるからです。申請が必要な発電能力10キロワット以上の設備の場合、1年目が1キロワット・アワー当たり40円、2年目が36円、いまが32円。これは欧州の2~3倍に当たります。その旨味を狙って国内外のデベロッパーが参入し“太陽光バブル”ともいえる状況が起きました」
もうひとつ、認定申請を加速させている理由はFITの制度設計の本質的欠陥にある。買い取り価格は認定時点の金額が適用されるにもかかわらず、運転開始までの期間が「いつまで」と決められていない。すなわち当初40円で認定を受けた発電事業者は、定められた調達期間である20年(10キロワット未満は10年)にわたって、その価格で買い取ってもらえる。
そのため、太陽光パネルが値下がりするまで建設や運転開始を延ばしたり、最初から接続権利を転売する目的で動く悪質な業者も見られた。
「九州電力管内を調査して気づいたことですが、巨大なソーラ―パネルが設置されているのは用地取得が容易な工業団地の工場が撤退したり、入居待ちの未分譲区画、開発が頓挫したり、閉鎖されたゴルフ場、あるいは耕作放棄地でした。ゴルフ場であれば森を大規模造成し、メガソーラーを設置する。そして、その太陽光設備を50キロワット未満まで低圧分割して個人投資家に2000~3000万円で販売するというビジネスも急増しています。業者によるとすぐにキャッシュ化でき、次のメガソーラーを建設していくのだという」(朝野氏)
50キロワット未満に低圧分割すると電気主任技術者がいらないなど、コストが安く抑えることができる。さらに500キロワット以上の場合は電力会社が発電事業者に無補償で送電中断(30日を限度)を要請できる「出力抑制」する制度があるが、低圧分割するとこの制度の対象外となる。