追加コストは500万円前後

近年よく耳にするようになった、スマートハウス。これは、太陽光発電やそれによって創られた電気を蓄える蓄電池などを備え、エアコンなどの機器を制御・管理をするHEMS(Home Energy Management System)を搭載した次世代住宅のこと。これらを導入することのメリットは第一に、住宅ごとに発電し電力会社から購入する電気を減らすことができること、第二に2012年夏より開始された再生可能エネルギーの全量買い取り制度により余剰電力を売って収入にすることができることです。

一般的な住宅をスマートハウス化するときの追加コストは、家の大きさや仕様にもよりますが、500万円前後といわれています。

自治体によっては、太陽光発電システム購入時などに補助金が出ますが、その初期投資額はけっして安いとはいえません。では見返り、つまりどれくらい節約できるでしょうか。

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スマートハウスで消費電力18%ダウン

私は以前、三菱電機が神奈川県大船につくった最新設備のスマートハウスを取材しました。その実証実験の成果(図・延べ床面積約223平方メートルの二世帯住宅)では、HEMSなどを使うことで日常生活を送るときに電力の18%分を省エネすることができ、さらにかかった電力も自前の太陽光発電でまかなうことができたそうです。すなわち、完全な電力の自給自足であるゼロエミッション住宅を実現し、電力を購入しなくてもすむということですから、これはありがたいことです。

なぜ、そんなことができたのか。それは、スマートハウスの重要な鍵のひとつHEMSの働きにあります。三菱電機のこの装置には、そこに住む家族の日々の電力使用のパターンを学習する機能があり、例えば起床時間が7時だとすると、前もってエアコンが自動で稼働する仕組みになっています。通常通り、人がエアコンのスイッチをONにすると、部屋は一気に暖められますが大きな電力を使います。しかし、HEMSの働きで少し前からじわじわと暖めると消費電力をぐんと抑えられるのです。夏場は、その逆で家族が帰宅する少し前から部屋を冷やし始めて、同じように節電できるそうなのです。

スマートハウス化で売電収入を含め1カ月2万円程度の電気代が浮き、初期投資額は20~30年で回収できる、とする電器・住宅メーカーもありますが、私はそれほど短期間では難しいと感じています。それらの数値はあくまで実験であり、地域や天候条件によって太陽光発電の発電量も変化してくるはずです。また、もともと住宅規模の大きい富裕層にとっては節電できる電気代もそれなりの額になります。その一方で、住宅規模が小さい大多数の非富裕層にとっては、節電のスケールは相対的に小さく、500万円の投資は割に合わない可能性が高くなるでしょう。