「どうせ住むのなら、日当たりがよくて、静かなところがいい」というのは、住み替えを考え始めた際に真っ先に思い浮かぶことだろう。そして、土地を選択する際のチェック項目の一つにあがってくるのが「用途地域」である。

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12種類ある用途地域のイメージ

用途地域は市街地における適正な土地利用を図るため、行政が地域ごとに建築物の用途、容積率、構造などに関して一定の制限を加える制度。要は乱開発を防いで、住環境を守っていこうというものである。その用途地域は別表にあるように12種類にわかれる。このうち商業地域が最も規制が少なく、百貨店、飲食店、銀行のみならず、小規模な工場まで建てられ、かなり広範囲な経済活動ができる。もちろん住居用の土地を探している人が商業地域を選ぶことはまずなく、大半の人は住居専用地域、なかでも最も制限の厳しい第一種低層住居専用地域になるだろう。

しかし、「自分の土地が第一種低層住居専用地域だから100%安心か」というと、「そうだ」とは決して言い切れないのだ。まず、道路を挟んで向かい側にある大きな空き地が商業地域であれば、大型のショッピングセンターが建つ可能性がある。現在建設中であったり、建設計画が決定しているものについて、仲介業者は重要事項説明書のなかで買い主に明示しなくてはならない。とはいえ、5年先、10年先に突如としてショッピングセンターの建設計画が持ち上がることまでは私たち仲介業者もわからないし、保証のしようがないのだ。

また、第一種低層住居専用地域には10メートルないし12メートルの高さ制限がかけられている。しかし、10メートルの高さがあれば、3階建ての低層マンションなら十分に建てられる。敷地の南側にそのようなマンションが建つと、当然日当たりは悪くなるし、家の中が丸見えでプライバシーが守れなくなる。それにワンルーム主体の賃貸マンションだと、人の出入りが激しくなって風紀も悪くなる。そうなると土地を手放す際になかなか買い手がつかず、売り値が相場より1~2割下がるかもしれない。