オンラインの世界だからこそ顔の見えるサービスを

同社では、プロモーションにもかなり注力している。テレビCMを頻繁に行っており、その過程では直感ではなく、データに基づいた科学的なアプローチが採られている。実際、逐次的にユーザーのリサーチを実施していて、今どういう層を取り込めていないのかを把握したり、広告クリエイティブに関してA/Bテスト(スプリットラン・テスト)を行ったりしている。この結果を検証することで、より訴求力の高いクリエイティブを開発・選別し流すようにしているのだ。

パズドラのテレビCMでは、メーン・キャラクターを前面に据え、壮大な音楽が流れる魅力的なコンテンツになっている。ゲームのBGMは打ち込み音だそうだが、テレビCMではより壮大感を演出するためにオーケストラを入れているという。

今のようなIT全盛の時代に、テレビCMに注力するということも意外だったが、驚いたのはSNSの取り組みをほとんど行っていない点だ。ツイッターのアカウントは所持しており、そこから情報発信はしているが、それを有効に活用しているかというと決してそうではないという。対照的に力を入れているのがオフラインのイベントだ。ちょうどお話をうかがったときが第2回パズドラジャパンカップの最中で、全国7カ所で地方大会を行っているところだった(本年は5月25日に東京ビッグサイトで優勝者が決定)。

以上から、同社は極めてアナログ的色彩の濃いマーケティングを実践していることがわかる。森下氏は、「コミュニケーション手段は、リアルのものを使っています」と言う。同社のアナログ性を象徴するのが、社長のコミュニケーション方法だ。時代の寵児ともいえる先端企業の社長が、ほとんどメールを使わず、電話や直接の語りかけを行っているというのだ。

イベントの際には、社長自ら着ぐるみを着て登壇し、自分の言葉でユーザーに語りかけるという。社長自身は、「僕は好きでやってるわけでは……」と苦笑いを浮かべるが、同社新規事業開発室室長の橋本裕之氏によれば、「しょっちゅう着ぐるみを着ています」とのことである。

この理由に関して、「僕ら作り手側も人間ですし、お客様も人間なので。オンラインの世界だから、逆に顔の見えるサービスを提供し、等身大で話しかけていきたいのです」と森下氏は語る。ニンテンドー3DS用のパズドラZの販売の際には、リアルの小売店舗に赴き、ゲームのやり方を子供たちに教えることもあるそうだ。その際、スーツ姿の社長がいきなり出てきても子供たちは引いてしまう。そこで着ぐるみを着て、フレンドリーなスタイルで説明を行うのだ。