リピーターの心を捉えて離さない理由

ゲーム事情も大きく様変わりしてきた。かつては高額のゲーム機やソフトを購入し、家で楽しんだものだが、今ではスマートフォン(以下、スマホ)がデバイスの中心に座り、ソフトはネットを通じて無料でダウンロードできるようになっている。このような「進化」により、昨今では年代や場所を問わずゲームに興じる光景を目にするようになった。

変容を遂げるゲーム業界がいまだ成長産業であるのは間違いない。が、IT企業からの参入も多く、競争は厳しい。その中でも、群を抜いて頂上に君臨しているのが、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ(以下、パズドラ)」である。2012年2月の発売以来、そのダウンロード数は驚異的に伸び続け、直近では実に2900万(14年7月)を突破している。

このようなメガヒットはどのようにして生まれたのだろうか。まずその着想についてうかがった。同社代表取締役社長の森下一喜氏によると、それは「破壊と創造」にあったという。彼は、IT企業の参入により蔓延しつつあった「ソーシャルゲーム」を破壊しようとしたのだ。興味深いことに森下氏はソーシャルゲームをやった経験はないそうだ。氏の言によると、性格はもともと天の邪鬼で、人と同じことをするのが嫌いだったからだ。

森下氏は、「今のソーシャルゲームはすべてカードバトルゲームである」と喝破している。ガチャで強いカードを集めては、パラメーターでぶつけ合う。つまり、お金を使って強くなった者が勝ち、それができなければ相対的に弱いままである。しかし実際には、無課金でゲームを楽しんでいるユーザーもたくさんおり、この人たちにもゲームの楽しさを味わってもらいたいと考えた。

ガンホーで作るゲームは、ユーザーに努力を要請する。努力をして、その後の達成感を享受してもらうことがゲームの醍醐味と考えているからだ。もちろんストーリーのよさということも重要だが、映画やドラマと違い、ゲームには主体性をもって行動するという異質の側面がある。そうであるならば、主体的に努力をし、その結果として達成感を得られるようにすることが最も重要と考えたのだ。

とはいえビジネスとして展開している以上、収益をきちんと確保することは至上命題である。無課金で努力するユーザーを大切にすることは、スローガンとしては理解できるものの、すべてのユーザーが無課金でゲームを楽しんだならば、会社はボランティア組織になってしまう。

その辺について尋ねたところ、パズドラの場合、1個100円の魔法石が、メーンの収益源になっているという。またそこから派生するキャラクター・マーケティングを行っており、これまで市場化されたキャラクターグッズは約450点にも上る。さらに、ニンテンドー3DS用(パズドラZ)やアーケード機用(パズドラバトルトーナメント)のソフトの提供も行っている。つまり、パズドラという至高のブランドをワンソース・マルチユースで展開し、ライフサイクルの長期化を図っているのだ。